強制力がある約束をしておくことが大切
強制執行するためには、その前提として、強制力のある約束が取り交わされていることが必要です。この約束を記載した文書を「債務名義」といいます。
この債務名義には、当事者自らが公証人役場に出向いて作成してもらう「公正証書」、家庭裁判所が作成してくれる「調停調書」、地方裁判所が作成してくれる「判決書」「和解調書」などがあります。
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※公正証書は、当事者が公正役場に行き、契約内容を示して公証人に作成してもらう公的な証書のことです。証拠力が強く、また証書の条項に執行認諾約款といって、本契約に違反した場合には強制執行をされても異議を申し立てない、という文言があれば訴訟をすることなく、強制執行ができます。
強制執行の方法
債務名義を持っていても、それだけで自動的に強制執行をしてもらえるわけではありません。
強制執行してもらうには、相手(債務者)の住所地を管轄する裁判所に対して差し押さえの申し立てをします。
この手続きは、支払いを受ける者が自分自身で債務者の所有している財産を探しあて、差し押さえる手続きをしなければならず、弁護士を代理人に立てて申立てをすることがほとんどです。
財産を探し当てるハードルが高いため、実施に移しにくかった強制執行ですが、特定の条件を満たすと、本人から財産の在り処(預金銀行、勤め先の情報)を開示させる「財産開示手続」を使用することができます。
財産開示手続きに必要なものとして、債務名義(調停調書、判決書)などがありますが、2020年4月施行の改正民法で、執行認諾約款がある公正証書でも申し立てられるようになりました。
このことにより、従来よりも強制執行のハードルが少し下がったと言えます。
▼差し押さえの対象となる財産
◎不動産 ◎預金 ◎給与
※給与は、月額給与のうち税金等を控除した手取りの1/2まで、控除後の給与(手取り)が66万円を超える場合は、その額から33万円を引いた額を差し押さえることができます。
給与の差し押さえは、未払い金額に達するまで毎月可能です。
また、将来分の養育費の差し押さえを申し立てることもできます。
給与の差し押さえは、養育費支払の満期を迎えるまでか、相手が会社を辞めるまで、もしくはこちらが強制執行を取り下げるまで続きます。
ただし、滞納している債務者が差し押さえで困窮する場合、差し押さえ出来る金額は小さくなる可能性があります。
※申立する差し押さえ方法によっては、現金も強制執行の対象とすることは可能です。ただし、強制執行をしたときに、たまたまそこにまとまった現金が置いてあったというような場合以外は、差し押さえることができません。
強制執行で効果的な回収ができなかったとしても、強制執行という手段そのものが、相手が約束を破ったときこちらが徹底的に追求する心づもりであるという強い意志を伝える効果を持ちますので、相手に対して心理的な強制力が働くでしょう。
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