強度の精神病について。どんな場合に離婚はできるのか?

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▼回復見込みのない強度の精神病
・離婚原因として認められる精神病と、認められない精神病
・離婚が認められるための条件と判例
・誰を被告として訴訟を起こすのか
強度の精神病で回復の見込みがなければ離婚できる

夫婦は同居し、互いに協力して扶助しなければならない義務をもっています。配偶者が強度の精神病にかかったような場合には、なおさら夫婦は互いに協力し、助け合わなければならない義務を負っています。

精神病離婚が認められるためには、「強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと」が必要です。この要件を満たすかどうかについては、最終的には医師の診断を参考にして、裁判官が判断することになります。

裁判官が判断する際、決め手になるのは、夫婦としての精神的なつながりがなくなり、正常な結婚生活の継続を期待できない程度の重い精神的障害かどうかということです。したがって、医学的に回復不能と判断された場合に限られるものではありません。精神病院に入院したからといって、すぐに離婚の請求をしても、まず認められません。

裁判所はさらに、離婚後の療養、生活などについてある程度めどがついた場合でないと離婚を認めるべきでないとしています。

一般的に裁判所は、精神病のように看護を要し、しかも何ら責められることのできないものに対する精神病を理由にした離婚請求は、よほど相手についての看護などの先行きの生活の見通しがたつ場合を除いて認めない傾向にあります。

離婚原因として認められる精神病

  • 早期性痴呆
  • 麻痺性痴呆
  • そううつ病
  • 偏執病
  • 初老期精神病

離婚原因として認められる精神病に属さないもの

アルコール中毒、薬物中毒、劇物中毒、ヒステリー、ノイローゼなどは精神病には属さないとされています。

植物状態やアルツハイマー病、重度の身体障害、上記のような強度の精神病にあたらない疾病や心身の状態を法定離婚原因として訴訟を提起するには、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として扱われることもあります。

離婚が認められるための条件

  • 治療が長期間に渡っている。
  • 離婚を請求する配偶者が、これまで誠実に療養、生活の面倒を見てきた。
  • 離婚後は誰が看病するのか、療養の費用は誰が出すのかなど、具体的な方策がある。

以上の要件を満たせば常に離婚ができるわけではなく、一切の事情を総合的に考慮してなお結婚を継続させるのが相当と判断される場合には、裁判所は離婚を認めません。

以上の要件を満たさない場合でも、正常な結婚生活の継続を期待できないような事情が認められる場合には、「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」という別の離婚原因にあたるとして離婚できる場合もあります。

強度の精神病の強度とはどの程度

精神病が強度といえるかどうかは、精神病の程度が婚姻の本質である夫婦の相互協力義務を果たせない程度にまで達しているかどうかによって決められます。

判例
夫婦の一方が不治の精神病にかかっている場合でも、諸般の事情を考慮し、病者の今後の療養、生活などについて、できる限りの具体的方途を講じ、ある程度において前途にその方途の見込みのついたうえでなければ、、離婚の請求は許されない(最高裁判決昭33.7.25)
妻が精神病にかかり、回復の見込みがなく、また妻の実家が療養のための経済的能力があり、他方夫の生活が必ずしも裕福とはいえないなどの事情がある場合は、離婚請求が認められる(最高裁判決昭45.11.24)

アルツハイマー病

アルツハイマー病で痴呆状態となった妻に夫が離婚を請求したケースで、罹患している状態は「回復の見込みのない強度の精神病」に該当しないとしつつ、妻が長期間にわたり夫婦の協力義務を果たせず婚姻関係が破綻していることが明らかであるとして、結果的に離婚を認めました。(長野地判平2.9.17)

重度の身体障害

裁判所は、交通事故により身体障害となった夫が妻の愛情と家庭生活への復帰を求めていても「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして妻の離婚請求を認めました。(東高判昭和52.5.26)

誰を被告として訴訟を起こすのか

離婚訴訟の当事者が強度の精神病であれば、訴訟行為をすることはできません。この場合、誰を相手にして訴訟を起こせばいいのでしょうか。

強度の精神病の者を相手に訴訟を起こすときには、まず禁治産宣告を受けさせ、後見人または後見監督人を選任してもらい、その者を被告として訴訟をなすべきであるとの判断を示しています。

■ その他に、どんな場合に離婚はできるのか?

 
 
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